臨床情報
アポクリン分泌上皮由来の良性腫瘍です。犬ではよくみられますが、猫ではそれほど多くありません。犬での発生のピークは8~11歳です。ラサアプソ、オールドイングリッシュシープドッグ、コリー、シーズー、アイリッシュセッターでリスクの上昇があると報告されています。性別による発生傾向の差はありません。好発部位は頭頚部です。猫では発生のピークは6~13歳で、頭部での発生が多くみられます。
アポクリン分泌上皮由来の良性腫瘍です。犬ではよくみられますが、猫ではそれほど多くありません。犬での発生のピークは8~11歳です。ラサアプソ、オールドイングリッシュシープドッグ、コリー、シーズー、アイリッシュセッターでリスクの上昇があると報告されています。性別による発生傾向の差はありません。好発部位は頭頚部です。猫では発生のピークは6~13歳で、頭部での発生が多くみられます。
細胞診
異型性の少ないアポクリン腺上皮(立方上皮)がシート状に認められます。細胞質内にはしばしばリポフスチンを思わせる青緑色の顆粒が観察されます。嚢胞形成がみられる場合には有核細胞成分が少なく、アポクリン腺嚢胞などとの鑑別はやや困難です。
(鑑別診断:アポクリン腺嚢胞、アポクリン腺過形成)
異型性の少ないアポクリン腺上皮(立方上皮)がシート状に認められます。細胞質内にはしばしばリポフスチンを思わせる青緑色の顆粒が観察されます。嚢胞形成がみられる場合には有核細胞成分が少なく、アポクリン腺嚢胞などとの鑑別はやや困難です。
(鑑別診断:アポクリン腺嚢胞、アポクリン腺過形成)
病理組織
アポクリン腺腫は単層立方の分泌上皮で構成される腺構造を特徴とし、構成する細胞は豊富な好酸性細胞質と基底側に位置する核を有しています。これらの上皮細胞には、アポクリン腺特有の断頭分泌像がしばしば観察されます。腺腔はしばしば拡張して嚢胞状となり、腺腔内には好酸性の分泌物をいれ、マクロファージなどの炎症細胞浸潤やコレステロール結晶が認められることもあります。
アポクリン腺腫は単層立方の分泌上皮で構成される腺構造を特徴とし、構成する細胞は豊富な好酸性細胞質と基底側に位置する核を有しています。これらの上皮細胞には、アポクリン腺特有の断頭分泌像がしばしば観察されます。腺腔はしばしば拡張して嚢胞状となり、腺腔内には好酸性の分泌物をいれ、マクロファージなどの炎症細胞浸潤やコレステロール結晶が認められることもあります。
予後・治療法
成長は遅く、適切なマージンで摘出すれば再発することはありません。
成長は遅く、適切なマージンで摘出すれば再発することはありません。
臨床情報
複合アポクリン腺腫は腺上皮および筋上皮の成分から構成される、アポクリン腺由来の良性腫瘍です。混合アポクリン腺腫では筋上皮の骨化生や軟骨化生が認められます。
複合アポクリン腺腫は腺上皮および筋上皮の成分から構成される、アポクリン腺由来の良性腫瘍です。混合アポクリン腺腫では筋上皮の骨化生や軟骨化生が認められます。
病理組織
複合腺腫では腺状構造を構成する分泌上皮細胞と、紡錘形の筋上皮細胞増殖の増殖が認められます。混合腺腫では、複合腺腫で観察される分泌上皮細胞と筋上皮細胞の増殖に加え、化生性の硝子軟骨や骨組織の形成を特徴とします。
複合腺腫では腺状構造を構成する分泌上皮細胞と、紡錘形の筋上皮細胞増殖の増殖が認められます。混合腺腫では、複合腺腫で観察される分泌上皮細胞と筋上皮細胞の増殖に加え、化生性の硝子軟骨や骨組織の形成を特徴とします。
予後・治療法
アポクリン腺腫と同様、適切なマージンで摘出すれば再発することはありません。
アポクリン腺腫と同様、適切なマージンで摘出すれば再発することはありません。
臨床情報
アポクリン導管上皮に由来する良性腫瘍で、犬および猫では比較的よくみられます。オールドイングリッシュシープドッグ、ゴールデンレトリバー、イングリッシュスプリンガースパニエルでリスクの上昇があると報告されています。性別による発生傾向の差はありません。犬での好発部位は頭部、胸部、腹部および背部です。猫では頭部に多くみられます。腫瘍は真皮深層に位置し、境界明瞭ですが被嚢はされていません。多小葉性で、内部にさまざまな大きさの嚢胞を認めることもあります。
アポクリン導管上皮に由来する良性腫瘍で、犬および猫では比較的よくみられます。オールドイングリッシュシープドッグ、ゴールデンレトリバー、イングリッシュスプリンガースパニエルでリスクの上昇があると報告されています。性別による発生傾向の差はありません。犬での好発部位は頭部、胸部、腹部および背部です。猫では頭部に多くみられます。腫瘍は真皮深層に位置し、境界明瞭ですが被嚢はされていません。多小葉性で、内部にさまざまな大きさの嚢胞を認めることもあります。
病理組織
アポクリン導管腺腫は、アポクリン腺の導管由来の良性腫瘍で、2層の上皮細胞が内張りする管状構造の形成を特徴とします。内腔には好酸性の分泌物を容れています。腫瘍細胞の異型性や核分裂像は軽度ですが、扁平上皮化生がしばしばみられます。
アポクリン導管腺腫は、アポクリン腺の導管由来の良性腫瘍で、2層の上皮細胞が内張りする管状構造の形成を特徴とします。内腔には好酸性の分泌物を容れています。腫瘍細胞の異型性や核分裂像は軽度ですが、扁平上皮化生がしばしばみられます。
予後・治療法
成長は遅く、適切なマージンで摘出すれば再発することはありません。
成長は遅く、適切なマージンで摘出すれば再発することはありません。
臨床情報
アポクリン分泌上皮に由来する単純癌です。犬では比較的よくみられますが、猫ではそれほど多くありません。犬では2~15歳で発生がみられ、ピークは8~12歳です。オールドイングリッシュシープドッグ、シーズー、ジャーマンシェパード、コッカースパニエルでリスクの上昇があると報告されています。猫では5~15歳がピークで、シャムでリスクの上昇があるようです。性別による発生傾向の差はありません。
好発部位は鼠径部および腋窩部ですが、猫ではこの他に口の周囲でも多くみられます。臨床像はさまざまで、皮内または皮下に結節性病変を形成することもありますが、炎症性癌(inflammatory carcinoma)と呼ばれるようなび慢性の糜爛性/潰瘍性皮膚炎としてみられることもあります。
アポクリン分泌上皮に由来する単純癌です。犬では比較的よくみられますが、猫ではそれほど多くありません。犬では2~15歳で発生がみられ、ピークは8~12歳です。オールドイングリッシュシープドッグ、シーズー、ジャーマンシェパード、コッカースパニエルでリスクの上昇があると報告されています。猫では5~15歳がピークで、シャムでリスクの上昇があるようです。性別による発生傾向の差はありません。
好発部位は鼠径部および腋窩部ですが、猫ではこの他に口の周囲でも多くみられます。臨床像はさまざまで、皮内または皮下に結節性病変を形成することもありますが、炎症性癌(inflammatory carcinoma)と呼ばれるようなび慢性の糜爛性/潰瘍性皮膚炎としてみられることもあります。
細胞診
上皮性細胞が塊状に採取され、強い異型性が認められます。写真では、核の大小不同、N/C比の増大およびばらつき、奇怪な大型核、大小不同多核、異常分裂像などが観察されます。他の上皮性悪性腫瘍と明確に鑑別するのは困難なことが多いです。
(鑑別診断:乳腺癌、肛門嚢アポクリン腺癌、その他の腺癌、皮膚の基底細胞腫瘍など)
上皮性細胞が塊状に採取され、強い異型性が認められます。写真では、核の大小不同、N/C比の増大およびばらつき、奇怪な大型核、大小不同多核、異常分裂像などが観察されます。他の上皮性悪性腫瘍と明確に鑑別するのは困難なことが多いです。
(鑑別診断:乳腺癌、肛門嚢アポクリン腺癌、その他の腺癌、皮膚の基底細胞腫瘍など)
病理組織
アポクリン腺癌は、充実性、管状、または嚢胞状構造を形成し、嚢胞の内腔に乳頭状に増殖することもあります。腫瘍細胞は豊富な好酸性細胞質を有し、細胞の自由縁にはしばしば分泌小胞を形成します。腫瘍細胞の異型性や核分裂は様々な程度で観察されます。腫瘍は真皮や皮下組織において、腫瘍性間質を伴って浸潤性に増殖します。
アポクリン腺癌は、充実性、管状、または嚢胞状構造を形成し、嚢胞の内腔に乳頭状に増殖することもあります。腫瘍細胞は豊富な好酸性細胞質を有し、細胞の自由縁にはしばしば分泌小胞を形成します。腫瘍細胞の異型性や核分裂は様々な程度で観察されます。腫瘍は真皮や皮下組織において、腫瘍性間質を伴って浸潤性に増殖します。
予後・治療法
成長速度はさまざまですが、炎症性癌は通常成長が早く、局所リンパ節や肺に転移を起こします。結節性のタイプはそれよりも成長が遅いようです。
成長速度はさまざまですが、炎症性癌は通常成長が早く、局所リンパ節や肺に転移を起こします。結節性のタイプはそれよりも成長が遅いようです。
臨床情報
複合アポクリン腺癌は、筋上皮の増生を伴うアポクリン腺上皮由来の悪性腫瘍です。複合アポクリン腺癌では筋上皮の骨化生や軟骨化生が認められます。
複合アポクリン腺癌は、筋上皮の増生を伴うアポクリン腺上皮由来の悪性腫瘍です。複合アポクリン腺癌では筋上皮の骨化生や軟骨化生が認められます。
病理組織
複合腺癌では、複合腺腫同様に腺状構造を構成する分泌上皮細胞と、紡錘形の筋上皮細胞増殖の増殖が認められます。分泌上皮細胞には異型性や浸潤性が認められます。
複合腺癌では、複合腺腫同様に腺状構造を構成する分泌上皮細胞と、紡錘形の筋上皮細胞増殖の増殖が認められます。分泌上皮細胞には異型性や浸潤性が認められます。
予後・治療法
アポクリン腺癌と比較すると成長は遅く、悪性度は低い傾向があります。局所リンパ節への転移もあまりみられません。
アポクリン腺癌と比較すると成長は遅く、悪性度は低い傾向があります。局所リンパ節への転移もあまりみられません。
臨床情報
アポクリン導管上皮に由来する悪性腫瘍で、発生は稀です。犬と猫における発生のピークは8~13歳です。品種や性別による発生傾向の差はありません。
アポクリン導管上皮に由来する悪性腫瘍で、発生は稀です。犬と猫における発生のピークは8~13歳です。品種や性別による発生傾向の差はありません。
病理組織
アポクリン導管癌では、2層から数層の腫瘍細胞が管状構造を形成します。腫瘍細胞は異型性や核分裂像を示し、扁平上皮化生は腫瘍全域にわたって観察されます。腫瘍の片縁では、腫瘍細胞の浸潤性増殖が認められますが、リンパ管浸潤は稀です。
アポクリン導管癌では、2層から数層の腫瘍細胞が管状構造を形成します。腫瘍細胞は異型性や核分裂像を示し、扁平上皮化生は腫瘍全域にわたって観察されます。腫瘍の片縁では、腫瘍細胞の浸潤性増殖が認められますが、リンパ管浸潤は稀です。
予後・治療法
成長は比較的遅いため、十分なマージンを取って外科切除を行います。転移することは稀です。
成長は比較的遅いため、十分なマージンを取って外科切除を行います。転移することは稀です。
臨床情報
耳垢腺由来の良性腫瘍で、犬と猫では比較的よくみられます。4~13歳で発生がみられ、ピークは7~10歳です。コッカースパニエルとシーズーでリスクの上昇があると報告されています。性別による発生傾向の差はありません。
この腫瘍は耳道内(垂直耳道も含む)に形成され、潰瘍化や二次感染がよくみられます。特に犬では外方増殖性を示します。このため、特にコッカースパニエルでは、重度の過形成性ポリープ様外耳炎との鑑別はしばしば困難です。濃い茶色にみえることがありますが、これは腫瘍の内腔に耳垢が貯留したためではないかと考えられています。猫では炎症性ポリープとの鑑別が重要です。中耳に発生した炎症性ポリープが鼓膜を超えて外耳にまで広がることがあるためです(ただし、これは通常若い猫でみられる疾患です)。
耳垢腺由来の良性腫瘍で、犬と猫では比較的よくみられます。4~13歳で発生がみられ、ピークは7~10歳です。コッカースパニエルとシーズーでリスクの上昇があると報告されています。性別による発生傾向の差はありません。
この腫瘍は耳道内(垂直耳道も含む)に形成され、潰瘍化や二次感染がよくみられます。特に犬では外方増殖性を示します。このため、特にコッカースパニエルでは、重度の過形成性ポリープ様外耳炎との鑑別はしばしば困難です。濃い茶色にみえることがありますが、これは腫瘍の内腔に耳垢が貯留したためではないかと考えられています。猫では炎症性ポリープとの鑑別が重要です。中耳に発生した炎症性ポリープが鼓膜を超えて外耳にまで広がることがあるためです(ただし、これは通常若い猫でみられる疾患です)。
細胞診
異型性の少ない耳垢腺上皮(立方上皮)がシート状に認められます。細胞質内にはしばしばリポフスチンを思わせる青緑色の顆粒が観察されます。
(鑑別診断:耳垢腺過形成)
異型性の少ない耳垢腺上皮(立方上皮)がシート状に認められます。細胞質内にはしばしばリポフスチンを思わせる青緑色の顆粒が観察されます。
(鑑別診断:耳垢腺過形成)
病理組織
耳垢腺腫ではアポクリン腺腫と類似の所見が認められますが、腺腔内にはやや茶色の分泌物を容れています。
耳垢腺腫ではアポクリン腺腫と類似の所見が認められますが、腺腔内にはやや茶色の分泌物を容れています。
予後・治療法
通常は緩慢な成長を示しますが、完全な外科的切除が困難な場合には耳道切除が必要になることもあります。
通常は緩慢な成長を示しますが、完全な外科的切除が困難な場合には耳道切除が必要になることもあります。
臨床情報
複合耳垢腺腫は腺上皮および筋上皮の成分から構成される、耳垢腺由来の良性腫瘍です。混合耳垢腺腫では筋上皮の骨化生や軟骨化生が認められます。
複合耳垢腺腫は腺上皮および筋上皮の成分から構成される、耳垢腺由来の良性腫瘍です。混合耳垢腺腫では筋上皮の骨化生や軟骨化生が認められます。
病理組織
耳垢腺腫ではアポクリン腺腫と類似の所見が認められますが、腺腔内にはやや茶色の分泌物を容れています。
耳垢腺腫ではアポクリン腺腫と類似の所見が認められますが、腺腔内にはやや茶色の分泌物を容れています。
予後・治療法
耳垢腺腫と同様、成長は通常緩慢ですが、完全な外科的切除が困難な場合には耳道切除が必要になることもあります。
耳垢腺腫と同様、成長は通常緩慢ですが、完全な外科的切除が困難な場合には耳道切除が必要になることもあります。
臨床情報
耳垢腺上皮に由来する単純癌で、犬と猫では比較的よくみられます。猫での発生のピークは7~13歳で、ドメスティックショートヘアでリスクの上昇があると報告されています。犬の発生のピークは9~11歳で、コッカースパニエルでリスクの上昇があるとされています。去勢雄での発生頻度が高いようです。猫では、耳垢腺由来腫瘍の2/3を占めると言われています。
耳垢腺癌は浸潤性で、糜爛や潰瘍を形成する傾向があります。二次感染は一般的にみられます。
耳垢腺上皮に由来する単純癌で、犬と猫では比較的よくみられます。猫での発生のピークは7~13歳で、ドメスティックショートヘアでリスクの上昇があると報告されています。犬の発生のピークは9~11歳で、コッカースパニエルでリスクの上昇があるとされています。去勢雄での発生頻度が高いようです。猫では、耳垢腺由来腫瘍の2/3を占めると言われています。
耳垢腺癌は浸潤性で、糜爛や潰瘍を形成する傾向があります。二次感染は一般的にみられます。
細胞診
アポクリン腺癌と類似の所見を示します。炎症を伴う場合には、さまざまな数の炎症性細胞も同時に認められます。
アポクリン腺癌と類似の所見を示します。炎症を伴う場合には、さまざまな数の炎症性細胞も同時に認められます。
病理組織
耳垢腺癌は耳垢腺腫に類似した所見を呈しますが、浸潤性を持ち、腫瘍を覆う表皮は糜爛・潰瘍化します。細菌による二次感染は一般的です。
耳垢腺癌は耳垢腺腫に類似した所見を呈しますが、浸潤性を持ち、腫瘍を覆う表皮は糜爛・潰瘍化します。細菌による二次感染は一般的です。
予後・治療法
耳垢腺癌は浸潤性を示します。耳道の軟骨を破壊することは稀ですが、真皮やリンパ管へ浸潤し、耳下腺リンパ節にも広がります。外科的に切除するには、通常は全耳道切除が必要になります。
耳垢腺癌は浸潤性を示します。耳道の軟骨を破壊することは稀ですが、真皮やリンパ管へ浸潤し、耳下腺リンパ節にも広がります。外科的に切除するには、通常は全耳道切除が必要になります。
臨床情報
複合耳垢腺癌は、筋上皮の増生を伴う耳垢腺上皮由来の悪性腫瘍です。複合耳垢腺癌では筋上皮の骨化生や軟骨化生が認められます。
複合耳垢腺癌は、筋上皮の増生を伴う耳垢腺上皮由来の悪性腫瘍です。複合耳垢腺癌では筋上皮の骨化生や軟骨化生が認められます。
病理組織
複合ならびに混合耳垢腺癌ではアポクリン複合腺癌ならびに混合腺癌と類似の所見が認められます。
複合ならびに混合耳垢腺癌ではアポクリン複合腺癌ならびに混合腺癌と類似の所見が認められます。
予後・治療法
耳垢腺癌と同様です。
耳垢腺癌と同様です。
臨床情報
肛門嚢アポクリン腺に由来する良性腫瘍で、犬と猫での発生はきわめて稀です。
肛門嚢アポクリン腺に由来する良性腫瘍で、犬と猫での発生はきわめて稀です。
病理組織
肛門嚢アポクリン腺上皮細胞による腫瘍性増殖で、腫瘍細胞は豊富な好酸性細胞質を有し、断頭分泌像を示すこともあります。構成する細胞の異型性や核分裂像はごくわずかです。
肛門嚢アポクリン腺上皮細胞による腫瘍性増殖で、腫瘍細胞は豊富な好酸性細胞質を有し、断頭分泌像を示すこともあります。構成する細胞の異型性や核分裂像はごくわずかです。
臨床情報
肛門嚢アポクリン腺に由来する単純癌です。犬ではよくみられますが、猫での発生は稀です。5~15歳の犬でみられ、発生のピークは7~12歳です。犬の会陰部では最も多く発生する悪性腫瘍です。イングリッシュコッカースパニエル、ジャーマンシェパード、イングリッシュスプリンガースパニエル、雑種犬でリスクの上昇があると報告されています。性別による発生傾向の差はあると考えられています。ただし、初期の報告では雌に多いとされていましたが、より大規模なデータに基づく別の報告では去勢雄のみでリスクが上昇するとされており、まだ統一した見解は得られていません。
この腫瘍は肛門の腹外側部の皮内から皮下に形成され、しばしば直腸の周囲組織にまで浸潤します。肛門周囲腫瘤としてみられることもあり、この場合は肛門周囲腺腫瘍と肉眼的には区別できません。潰瘍化は稀です。肛門嚢を絞る際に認められることもあります。大型の腫瘍は直腸を圧迫し、排便時のいきみや排便困難を引き起こすことがあります。また、腫瘍が上皮小体ホルモン関連蛋白(PTHrP)を分泌するため高カルシウム血症になり、多飲多尿や虚弱を示す例が多くみられます。
肛門嚢アポクリン腺に由来する単純癌です。犬ではよくみられますが、猫での発生は稀です。5~15歳の犬でみられ、発生のピークは7~12歳です。犬の会陰部では最も多く発生する悪性腫瘍です。イングリッシュコッカースパニエル、ジャーマンシェパード、イングリッシュスプリンガースパニエル、雑種犬でリスクの上昇があると報告されています。性別による発生傾向の差はあると考えられています。ただし、初期の報告では雌に多いとされていましたが、より大規模なデータに基づく別の報告では去勢雄のみでリスクが上昇するとされており、まだ統一した見解は得られていません。
この腫瘍は肛門の腹外側部の皮内から皮下に形成され、しばしば直腸の周囲組織にまで浸潤します。肛門周囲腫瘤としてみられることもあり、この場合は肛門周囲腺腫瘍と肉眼的には区別できません。潰瘍化は稀です。肛門嚢を絞る際に認められることもあります。大型の腫瘍は直腸を圧迫し、排便時のいきみや排便困難を引き起こすことがあります。また、腫瘍が上皮小体ホルモン関連蛋白(PTHrP)を分泌するため高カルシウム血症になり、多飲多尿や虚弱を示す例が多くみられます。
細胞診
多数の上皮性細胞が塊状に採取されます。これらの細胞は核クロマチンに乏しい類円形核と淡好塩基性に染色される立方状の細胞質を有しています。時折、ロゼット様構造を示す部分が認められます(下の写真の中央やや右寄り)。また,細胞間結合性の低下がみられる場合もあります。犬の肛門嚢アポクリン腺癌では細胞異型の少ないものが多く、細胞異型のみで良性または悪性を判断することはできませんが、肛門嚢アポクリン腺腫の発生はほとんどみられないため、この部位の腫瘤から多数の立方上皮細胞が採取された場合には肛門嚢アポクリン腺癌を疑います。細胞異型の強いものでは肛門周囲腺癌との鑑別は困難です。
(鑑別診断:肛門周囲腺癌)
多数の上皮性細胞が塊状に採取されます。これらの細胞は核クロマチンに乏しい類円形核と淡好塩基性に染色される立方状の細胞質を有しています。時折、ロゼット様構造を示す部分が認められます(下の写真の中央やや右寄り)。また,細胞間結合性の低下がみられる場合もあります。犬の肛門嚢アポクリン腺癌では細胞異型の少ないものが多く、細胞異型のみで良性または悪性を判断することはできませんが、肛門嚢アポクリン腺腫の発生はほとんどみられないため、この部位の腫瘤から多数の立方上皮細胞が採取された場合には肛門嚢アポクリン腺癌を疑います。細胞異型の強いものでは肛門周囲腺癌との鑑別は困難です。
(鑑別診断:肛門周囲腺癌)
病理組織
肛門嚢アポクリン腺癌では、分泌上皮由来の腫瘍細胞が充実性シート状、ロゼット状または管状構造を形成しながら増殖します。腫瘍細胞は円形から卵円形の正染性から濃染する核と、少量の好酸性細胞質で構成されます。腫瘍は周囲組織に浸潤し、しばしばリンパ管内に腫瘍塞栓を形成します。
肛門嚢アポクリン腺癌では、分泌上皮由来の腫瘍細胞が充実性シート状、ロゼット状または管状構造を形成しながら増殖します。腫瘍細胞は円形から卵円形の正染性から濃染する核と、少量の好酸性細胞質で構成されます。腫瘍は周囲組織に浸潤し、しばしばリンパ管内に腫瘍塞栓を形成します。
予後・治療法
成長の速度はさまざまですが、転移はよくみられます。もっとも多いのは仙骨あるいは腰下リンパ節への転移ですが、その後肺や他の内臓(脾臓など)にも広がります。腫瘍が浸潤性を示し、また線維増生も多いため、完全切除はしばしば困難です。外科的切除のみで治癒することもありますが、リンパ節転移がみられる症例では一般的に予後は不良です。
成長の速度はさまざまですが、転移はよくみられます。もっとも多いのは仙骨あるいは腰下リンパ節への転移ですが、その後肺や他の内臓(脾臓など)にも広がります。腫瘍が浸潤性を示し、また線維増生も多いため、完全切除はしばしば困難です。外科的切除のみで治癒することもありますが、リンパ節転移がみられる症例では一般的に予後は不良です。
症例リンク: 高カルシウム血症
無断での転用/転載は禁止します。
参考文献
参考文献
・World Health Organization International Histological Classification of Tumors of Domestic Animals, Washington, DC, Armed Forces Institute of Pathology, 1998
・Tumor in domestic animals, 4th ed, Ames, Iowa, Iowa State Press, 2002.
・Tumor in domestic animals, 5th ed, John Wiley & Sons, inc, 2017.
・Withrow & MacEwen's Small Animal Clinical Oncology, Withrow J.S, et al: Elsevier; fifrth ed, Saunders-Elsevier, 2013
・Gross TL, et al: Skin diseases of the dog and cat. Clinical and histopathologic diagnosis, 2nd ed, Blackwell, 2005.
・Cowell RL, Valenciano AC. Cowell and Tyler’s Diagnostic Cytology and Hematology of the Dog and Cat. 4th ed. St. Louis. Mosby. 2013.
・Raskin RE, Meyer DJ. Atlas of Canine and Feline Cytology, 2nd ed. W.B. Saunders. Philadelphia. 2009.
* 本腫瘍マニュアルは、主に上記の文献を参考にしていますが、IDEXXの病理診断医が日々の診断を行う際に用いるグレード評価などは他の文献等を参考にしています。